「メタバース上のコンテンツ等をめぐる 新たな法的課題等に関する論点の整理 」について

知的財産戦略本部では、先週、「メタバース上のコンテンツ等をめぐる新たな法的課題等に関する論点の整理 」と題したレポートを発表しました。

こちらは、同本部で行われていた「メタバース上のコンテンツ等をめぐる新たな法的課題への対応に関する官民連携会議」及び分科会の議論、そしてこれらに関するパブリックコメントの結果を反映したレポートとなっております。

以下本論点整理で問題になった論点について簡単に解説いたします。

1.メタバースがなぜ法的な焦点となるのか

メタバースは、現実世界から一歩進んだバーチャルな空間で、オンラインでの取引やイベントなどの活動が頻繁に行われています。しかし、この新たな領域では、知的財産権の保護(例:メタバース内のデザインやアバターの肖像権、商標権)や犯罪行為(例:不正アクセスや詐欺行為)への対策など、未だ解決されていない法的課題が生じています。そのため、これらの法的問題を整理し、適切な対策を練ることが重要となっています。

2.本論点整理で考えられるメタバースとは何か?

本論点整理では、メタバースは現実世界とは異なる、多様な形の仮想空間の集合として捉えられています。具体的には、既存の仮想空間(例:オンラインゲームやSNS)だけでなく、VRやブロックチェーン技術を活用した新たな形の仮想空間も含んでいます。また、メタバースは開放的で自由な空間であり、創造性が奨励されることが重要とされています。

3.メタバースに対する法的規制の提案とその方向性

本論点整理では、メタバースに対する法的規制の方向性として以下のようなポイントが挙げられています

  • ソフトローとハードロー、両面からのルール整備が必要
  • メタバースの特性に合わせたルール作りが求められる
  • ルール作りには、プラットフォーマー、関連企業、ユーザー、権利者などの協力が重要
  • 民間のソフトローを強化し、関連団体が作るガイドラインや契約テンプレートに本議論の視点を取り入れることが望ましい

これらの提案は、メタバースの法的課題に対する解決策を考える上での重要なガイドラインとなります。

4.論点整理の各論について

4-1.現実と仮想が絡み合う知的財産権の使用や仮想オブジェクトのデザイン

この議論では、現実と仮想が絡み合う場面での知的財産権の使用や仮想オブジェクトのデザインについて以下のポイントが提出されています:

  • 現実世界のデザインが仮想空間に輸入されたり、逆に仮想空間のデザインが現実世界に取り入れられるなど、現実と仮想が絡み合う形での知的財産権の使用が広まっている
  • 現行法では、現実世界で保護されるデザインが、仮想空間ではどの法律にも該当しない場合もあるとの懸念から、商品の模倣などについても対策が必要とされている
  • このような状況の中で、現実世界の権利者がどのように保護されるか、仮想空間での新たな創造物(例:アバターの「実用品」)がどのように保護されるかという問題について、具体的な議論が求められている

これらのポイントから、現実と仮想が絡み合う知的財産権の使用や仮想オブジェクトのデザインには、現行の法律体系ではカバーしきれない法的課題が存在していることが明らかになります。そのため、不正競争防止法や意匠法などの法律を見直し、ネット上での商品模倣行為を規制し、クリエイターの創作活動が抑制されないような法的措置が求められています。また、現実と仮想が交錯するデザインの使用について、著作権法や意匠法、不正競争防止法による保護の範囲や限界を整理し、広く周知することが必要とされています。このテーマは進行形の問題なので、引き続き注意が必要です。

4-2.アバターのデザインとその取り扱いについて

アバターのデザインやパフォーマンスの取り扱いについて、アバターのデザインの無許可使用、他人のアバターのデザインの無許可使用・無許可撮影や公開などが議論の焦点となっています。これらに対しては、現行法では適切に対応できないという意見が多く、不正競争防止法や意匠法などの見直しの必要性が指摘されています。

さらに、クリエイターの創造性が制約される可能性についても懸念が提起されています。具体的には、アバターを使用した商品の模倣や他人のアバターを無許可で使用するなどの行為が問題視されています。これらに対する対策としては、不正競争防止法改正案などが提出されています。

しかし、クリエイターやユーザーからは、「表現の自由が制約される」という懸念も指摘されています。そのため、法律の見直しに際しては、クリエイターの創造性を抑制しないように慎重な議論が必要とされています。

また、アバターのデザインの無許可撮影・公開についても、肖像権やパブリシティ権による保護が適用可能かについて議論があります。現行法では、アバターに関する肖像権やパブリシティ権は明確に定義されていないため、判断が困難とされています。そのため、アバターのデザインに関する法的扱いについては、引き続き調査と理解が必要で、世界の動向を踏まえた適切な検討が求められています。

さらに、「官民一体のルール作り」が提言されています。メタバースにおけるルール作りについては、ヨーロッパをはじめとする各国や民間主導の国際フォーラムなどで様々な議論が行われています。これらの動向を考慮した適切な法律・ルールの検討が求められています。全体的に見て、アバターやメタバースにおけるイメージやデザインの取り扱いについて、現行の法律では適切に対応できないと認識されており、今後の法改正やルール作りにより解決することが必要とされています。しかしながら、クリエイターの創造性が制約されないように、慎重な検討が求められています。

4-3.仮想オブジェクトやアバターに対する行為、アバター間の行為をめぐ るルール形成、規制措置等について

本項では、仮想オブジェクトやアバターに対する行動、またアバター同士の行動についてのルール作りや規制措置について議論されています。具体的には、メタバースを多様で創造的な空間として発展させるため、ユーザーの安全と安心を確保するためのルール作りが重要であると強調されています。

さらに、現在抱えている問題や将来的な問題の対応策を探るとともに、国際的なルール作りも視野に入れ、日本発のメタバースルールを明確化し、それを国際的な活動につなげられるよう提案されています。しかし、サービスの自由な発展や競争を阻害しないよう、事業者がまず問題に対応することが望ましいとされています。

さらに、官民連携会議で引き続きフォローアップを行い、関係者間の議論や世論の動向を定期的に確認し、必要な時には考え方を整理して公表することが求められています。また、メタバースでの問題対応については、利用規約や技術的対策など、様々な手段を踏まえて適切な対応を検討することが必要とされています。

全体として、メタバースの発展を促すためには、自由で多様な空間を保ちながら、ユーザーの安全と安心を確保するルール作りが重要であり、そのためには関係者間の協力と議論が必要とされています。

5.まとめ

この文章では、メタバースのルール作りについての現状と将来の方向性についてまとめています。具体的には、自由で多様性に満ちた空間を保持しながら、ユーザーの安全と安心を確保するためのルール作りが重要であると強調されています。さらに、法的なルールだけでなく、利用規約や技術的な対策など、様々な方法を用いて適切に対応することが求められています。また、いくつかの問題はまだ解決されておらず、これらについては継続的な議論が必要とされています。

前田拓郎法律事務所では、この記事を基にメタバースの権利に関する議論を続け、その進行を追って最新の法的課題に対応したサービスとコンサルティングを提供していきます。ご関心のある方はいつでもお問い合わせください。

(参考記事:https://www.kittenlawoffice.com/post2/neo-technology/

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