2023年6月7日に「不正競争防止法等の一部を改正する法律案」が参議院で可決、正式に決定されました。不正競争防止法の改正は、デジタル化とコロナ禍による社会環境の大きな変動に対応するために必要となりました。新型コロナウイルスの影響で働き方やビジネス環境が大きく転換し、これに伴いデジタル化が急速に進行。これは商標の存在形態やビジネスのあり方を根本的に変え、知的財産の保護や市場競争の健全性に新たな課題を投げかけています。特に、デジタル空間での模倣行為の防止と、営業秘密や限定提供データの保護の強化は、デジタルビジネスモデルの多様化に対応する上で欠かせない課題となりました。
商標法の2023年の改正では、コンセント制度が採用され、登録可能な商標の範囲が拡大されました。この制度は、先行登録商標と同一または類似の商標が出願された場合でも、当該先行登録商標の権利者による同意があれば両商標の併存登録を認めるもので、海外の多くの国・地域(米国、欧州、台湾、シンガポール等)で既に導入されています。日本でも、海外ユーザーによる日本での商標登録の障壁を取り除くことを目指し、コンセント制度の導入が提案されました。
2023年の不正競争防止法改正では、デジタル空間での模倣行為の防止が重視されました。具体的には、デジタル化に伴うビジネスの多様化に対応するため、形態模倣の防止が強化されました(不正競争防止法第2条3項1号の改正)。改正により、物理的な形状だけでなく、ソフトウェアやウェブサイトのデザインなどデジタル領域での形状も模倣の対象となり、そのような行為が禁止されます。これにより、企業は自社のデジタルアセットの保護を確保し、市場の健全な競争を維持することが可能となります。
また、営業秘密や限定提供データの保護も強化されました。特に、公然と知られている情報が保護の間隙になり得るという課題に対応するため、保護範囲の明確化が図られています。改正により、「秘密として管理されているものを除く」という文言が「営業秘密を除く」に変更され、これにより保護の隙間を埋め、より一層の保護を実現しました。
そして、コロナ禍とデジタル化に対応した知的財産手続の整備も実施されました。商標登録や特許申請などの手続きがデジタル化され、オンラインで完結するようになりました。審査や裁判手続きもリモート対応が可能となり、手続きの効率化が実現しました。これにより、企業や個人は場所や時間に縛られることなく、知的財産の保護に必要な手続きを行うことが可能となり、知的財産の取得・保護が容易となり、新たなビジネスの創出や経済活動の活性化が期待できます。
不正競争防止法の改正により、メタバースなどデジタル空間での模倣行為が強く規制されることになりました。特に、リアルで存在している服装や小物・装飾品などをそのままバーチャルな空間において模倣して製作する行為やバーチャルな空間で作った作品を模倣して再度バーチャル空間で製作する行為が直接禁止されることになり、同号の模倣の概念の充足に関する判断が事例ごとに判断されることになります。また、営業秘密や限定提供データの保護も強化されました。これらの改正に対応するため、企業では次のような対応が求められます。
改正法は企業の知的財産保護を強化し、デジタル化に対応するための重要な一歩となりました。しかし、その適用や対応策については専門的な知識が必要となります。商標法や不正競争防止法の専門家である弁護士にご相談いただくことをお勧めします。弁護士は企業の具体的な状況を踏まえた法的アドバイスを提供し、最適な対応策を策定します。このようなサポートにより、企業は新たなビジネス環境に対応し、競争力を保つことができます。
特に今般の改正はメタバース空間における商品やオブジェクトの利用・譲渡などを念頭に置いた改正であり、メタバース空間を用いて事業を営む企業様にとってはきちんとフォローアップしなければならない改正内容です。弊所はメタバースに関する最先端の法務を提供しており、メタバース空間での事業を進める企業様の良きパートナーとして活動しております。
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