【クリエイター必見】AI画像生成「i2i」「t2i」「ip2p」著作権侵害の判断基準

前回弊所では生成AIに関する技術の問題としてLoraについて著作権との関係性を記事にいたしました。今回は第2弾として巷でよく使われている生成AI技術たるi2i,t2i,ip2pについても著作権との関係性を説明いたします。

1.現在の生成AIツールの類型

AI技術の進歩に伴い、生成AIツールの類型も豊富になってきました。特に注目を集めているのが「t2i(Text to Image)」、「i2i(Image to Image)」「ip2p(instruct pix2pix)」という3つの形式です。

「t2i」は、入力されたテキストからイメージを生成するAI技術で、簡単な説明文から具体的なビジュアル表現を生成します。例えば、”a red apple on a table”というテキストを入力すると、その説明に基づいた赤いリンゴの画像を生成します。

「i2i」は、一つの画像から別の画像を生成する技術です。例えば、一つの風景画像を別の季節や時間帯の風景画像に変換したり、一つのアートスタイルの画像を別のスタイルに変換するなどの作業が可能です。

最後に、「ip2p」は画像からテキストだけでなく、画像に線や色を指示することで、既存の作品をより簡易にカスタマイズする技術を指します。

2.画像生成AIについての著作権侵害の成否

AIが画像を生成する際に生じる著作権侵害の問題は、依拠性と類似性がキーポイントとなります。生成物と既存の作品が類似している場合、その依拠性が問われます。つまり、学習データの過程で被侵害作品が用いられていたか、AIの指令を出す過程で被侵害作品にアクセスがあったか、という点が重要となります。

この点について場合分けをすると以下の通りになります。

  1. 学習データには被侵害品が含まれておらず、指令を出すにあたり被侵害品のアクセスがなかった場合
  2. 学習データには被侵害品が含まれてないが、指令を出すにあたり被侵害品のアクセスがあった場合
  3. 学習データに被侵害品が含まれていたが、指令を出すプロセスに被侵害品へのアクセスがなかった場合
  4. 学習データに被侵害品が含まれており、かつ指令を出すにあたり被侵害品のアクセスがあった場合

2.4.においては指令者が独自に被侵害品にアクセスしているので依拠性は満たされ生成物は侵害品になります。また1.について依拠性が認められない(非侵害)であることも明白です。問題は3.のケースですが、この点については学習データによる学習の過程でパラメータに分化したものが再生成したからと知ってそれをもって被侵害品にアクセスがあったと法的に評価できるかという点で依拠性を肯定する説と否定する説に分かれています。

3.各論

AIの進歩は、”Image to Image”(i2i)、”Text to Image”(t2i)、および”instruct pix2pix”(ip2p)などのツールの登場をもたらしました。しかし、これらのツールが著作権法とどのように関係しているのかは依然として明確ではありません。以下では、それぞれのツールと著作権との関連性を検討します。

まず、i2iツールは、元のイラストを基に新たなイラストを生成します。元のイラストに直接依拠するこのプロセスは、新たに生成されたイラストが元のイラストと本質的に類似している場合、複製権侵害あるいは翻案権侵害の問題を引き起こす可能性があります。

次に、t2iツールでは、テキストの内容をイラストに変換します。ここで問われるのは、テキストからイラストへの変換が本質的に同一の表現を再現しているか、ということです。しかし、指示を出す際の言葉がテキストを直接コピーしたものでない限り、この依拠性を認めるのは困難です。また、生成されたイラストが一般的な表現に過ぎない場合、それを複製権または翻案権侵害と見なすことも困難です。

最後に、ip2pツールは画像からテキストだけでなく、画像に線や色を指示することで、既存の作品をより簡易にカスタマイズする技術を指します。これについては、指示内容が既存の作品を元にしているのか、それとも新たなアイデアに基づいて線や形状が描かれているのかが重要となります。著作権法は具体的な表現を保護するものであり、アイデアそのものは保護の対象外です。そのため、具体的な線や形状、背景処理などが被侵害作品の本質を表現しているか否かを見極め、著作権侵害の成否を議論する必要があります。

4.結論

結論としては、依拠性という概念がAI生成物の著作権侵害問題における中心的な役割を果たすことが確認されます。そのため、具体的な指示の内容や、特定の線や形状を描く過程、それらが表現する意図などを踏まえて、著作権侵害の成否を判断する必要があります。

5.AI生成物に関するご相談は、前田拓郎法律事務所へ

前田拓郎法律事務所では、著作権とAI技術に関する専門知識を持ち、クリエイターの皆様のニーズに応えたアドバイスを提供しています。AIによる利用が潜在的な損害や評価のリスクを引き起こす可能性について懸念を抱いている方々に対して、包括的なコンサルティングとアドバイスを提供し、安心して作品を創造するための環境を提案します。これらの問題に関心がある方は、いつでも弊所までご連絡ください。

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