2023年6月に内閣府は「知的財産推進計画2023」を決定しました。これは現在の知的財産分野における問題点を整理し今後の政府の施策の流れを示す重要な文書となっております。本稿ではこの計画の内容について概略的に説明を加えるとともに本計画が特に想定しているクリエイター・フリーランス・コンテンツ事業者の方々に向けてできるサポートについても説明できればと考えております。
知的財産推進計画2023は、「多様なプレイヤーが世の中の知的財産の利用価値を最大限に引き出す社会」を実現するための戦略的な目指しを定めています。その具体的な目的としては、知的財産を活用した持続可能な価値創造、オープンイノベーションを通じた知的財産の活用促進、AI技術の進展に伴う知的財産活動の課題への対応、コンテンツ産業のグローバル展開を支える知的財産戦略の推進などが挙げられます。また、知的財産権利者の権利保護と利用促進の両立、知的財産に関する訴訟制度の改善、行政手続の簡素化・効率化、そして知的財産に関する人材育成と情報の共有・活用の推進も目指しています。これらの施策を通じて、知的財産を有効に活用し、持続可能な社会の実現に寄与することを目指しています。
「知的財産推進計画2023」において重視されている項目は、知的財産やAI、イノベーションの活用を通じて新たな価値を創出し、社会全体の成長を促進することを目指しています。その具体的な施策は以下の10項目にまとめられます。
これらの施策は、知的財産の価値を最大化し、社会全体の発展を促進するための重要な指針となります。今後の実施に向けて、国や企業、教育機関などが一体となって取り組むことが期待されています。
AI技術の進展が知的財産活動に与える影響については、新たな情報財検討委員会報告書において、AIが自律的に(人間による旧来的な創作的な関与を受けずに)創作した場合の取扱いについて、諸外国における取扱いの状況も踏まえて、新たな課題の有無等を含めて確認、整理しておくことが必要であると述べられています。また、報告書では、AIの学習用データを提供・提示する行為について、新たな時代のニーズに対応した著作権法の権利制限規定に関する制度設計や運用の中で検討を進めること等が挙げられています。さらに、AIが悪用される場合や、AI生成物に関する人間の創作的寄与の程度の考え方について、AIの技術の変化等を注視しつつ、具体的な事例に即して引き続き検討すること等が挙げられています。つまり、AI技術の進展によって生じる知的財産活動の課題については、具体的な事例に即して検討を進める必要があるとされています。 もっとも、これらの現状の提示については以前からの議論を踏襲したものであり新しく踏み込んだ点は存在しないことに留意する必要があります。
知的財産推進計画2023(案)において、スタートアップ強化・支援策については以下のような言及があります。
以上のように、大学やベンチャーキャピタルとの連携や、知財専門家による支援、プログラムの実施など、スタートアップ強化・支援策が盛り込まれています。
クールジャパン戦略とは、日本政府が推進する政策の一つで、日本の伝統文化や現代のポップカルチャー、ファッション、アート、食文化など、日本独自の魅力ある文化やライフスタイルを世界に広め、日本のソフトパワーを強化することを目指しています。
具体的な施策としては、国内外のクリエイターやアーティストの支援、新たなビジネスモデルの創出、海外への展開支援などが行われています。また、各地の自治体や大企業と連携し、日本の文化を発信するネットワークの構築も重要な一環となっています。
この戦略は、日本文化の国際的な認知度と評価を高め、海外からの観光客増加や新たなビジネスチャンス創出を通じて、経済の活性化にも寄与することを期待されています。
クールジャパン戦略の実現のためには、クールジャパンの魅力を高めるための取り組み、クールジャパンの担い手によるネットワークの構築、クールジャパンの持続的な発展のための取り組みが必要であるとされています。具体的には、クールジャパンの担い手に対する支援や育成、海外展開の支援、新たなビジネスモデルの創出支援などが挙げられています。また、クールジャパンの魅力を発掘し、海外に発信するための施策や、クールジャパンの担い手による交流の場の提供なども重要な施策とされています。さらに、クールジャパンの担い手と大企業との連携や、地方公共団体との連携も重要な施策として挙げられています。これらの施策を実施することで、クールジャパン戦略の実現に向けた取り組みが進められることになります。
環境の改善については、社会保障制度の整備や収入の安定化を図る支援策、働く環境の改善を図る施策などが挙げられています。また、クリエイター・制作会社に対する契約条件の明確化や適正な報酬の支払いを促進することで、クリエイター・制作会社の権利保護と利用促進の両立を図ることが目指されています。さらに、消費者嗜好データに基づく「売れる作品」の製作に偏ることによる、独自のコンテンツ製作に影響が及ぶ可能性についても懸念が示されています。これらの施策を実施することで、クリエイターや制作会社、フリーランスや芸術文化関係者の働く環境の改善や、クリエイター・制作会社の権利保護と利用促進の両立を図ることが期待されています。
本計画の内容はこれまでの議論を基本的に踏襲したものであり新たな施策・提言を含むものではありません。しかし、現在の日本を取り巻く関係者の権利問題に対する検討の現状を示すものとして発表することに意義があるものと考えられます。特にクリエイターの働く環境や作品についての権利問題について重要な到達点を示すものであり、クリエイター・フリーランスの方には専門家からわかりやすく説明を設けえる機会も必要と思料されます。
前田拓郎法律事務所では、AIやクリエイター関連の法律問題に幅広く対応しております。AIを使用する際の著作権問題、クリエイターやフリーランスが直面する法的課題、コンテンツビジネス事業者が抱える知的財産権の管理や適正な報酬の確保といった問題に対して、高度な専門知識を持つ弁護士が迅速で的確なアドバイスを提供します。
特にAIを利用するクリエイターの皆様に対しては、人間の創作的な関与が少ないAIによる創作物の著作権保護についての最新の法的情勢を踏まえたアドバイスを提供します。また、AI技術の利用による新たなビジネスモデルの展開に伴う法的リスクについても対策を提案いたします。
一方、適正な働き方を模索するクリエイター・フリーランスの皆様には、労働環境改善や報酬確保についての法律相談を実施します。契約交渉時のアドバイスや契約書の作成、必要に応じた法的措置など、権利保護の一環として多角的な支援を行います。
さらに、コンテンツビジネス事業者の皆様に対しては、知的財産権の適切な管理や利用、国内外のビジネスチャンスの探求をサポートします。また、新たなビジネスモデルの法的フレームワーク作成や規制環境に関する調査など、事業の成功を後押しする法務サービスを提供します。
さらに、我々はスタートアップを強力に支援します。ベンチャーキャピタルとの交渉に知財専門家として立ち会い、適切な対応をサポートします。また、契約作成や法的な問題解決における代理人としての役割も果たし、スタートアップが安心して事業に取り組めるよう全力で支援します。
前田拓郎法律事務所は、クリエイター、スタートアップの皆様が創造的な活動に専念できるよう、法的問題解決のパートナーとして全力でサポートします。どんな疑問や課題もお気軽にご相談ください。