VRにおける相談や事業のパートナーに適切な弁護士とは?現在の法律や今後の在り方などを解説

VR(Virtual Reality)の法律環境が注目される今日、このテクノロジーについての包括的な理解が必要です。本記事では、VR技術の基本概念、仮想世界の法律環境、それに関連する法律問題への取り組み、そして特にVR法律問題に精通した弁護士の重要性について詳しく説明します。これからVR空間を探索する方や、VRに関連する法的課題についての認識を深めたい方は是非ご一読ください。

1.VRの概要

VR(Virtual Reality)とは、仮想現実の世界を表す技術です。このテクノロジーは、ユーザーが特殊なヘッドセットやゴーグルを用いて、完全に没入型の体験を得ることを可能にします。これらのデバイスは、ユーザーを仮想の空間に連れて行き、そこでのリアルな体験を提供します。しかし、この新しい領域は法的な枠組みの整備が進行中で、特に権利関係の問題やVR空間における法的な問題が存在します。これらの問題に対処するためには、専門的な法的アドバイスが必要となります。

1)VR(Virtual Reality)の意味

VRとは、「Virtual Reality」の略で、直訳すると「仮想現実」を意味します。この技術は、実際の世界とは異なる、仮想的な空間をユーザーに提供します。この空間でユーザーは、現実に近い体験を得ることができます。この現実感を生み出すのは、特殊なVRゴーグルやヘッドセットを使用することによります。これらの装置は、全く新しい視覚体験を提供します。当初はゲーム業界での利用が主流でしたが、現在では多様な領域でその可能性が探究されています。

2)VRの仕組み

VRの体験は、主にヘッドセットと呼ばれる特殊なゴーグルによって実現されます。このヘッドセットは使用者の視界全体を覆い、その中で顔の向きに応じて映像が動き、仮想空間への完全な没入感を提供します。映像が立体的に見えるのは、ヘッドセットのディスプレイが右目と左目で異なる映像を表示するからです。また、多くのヘッドセットにはピント調節機能が搭載されており、より現実に近い体験を可能にします。最近では、視覚や聴覚だけでなく、触覚を刺激するVRデバイスも開発されています。

3)VRでできること

VRの最大の特徴は、その高い没入感と物理的制約から解放された体験が可能であることです。そのため、映画や書籍以上の臨場感を提供することができます。エンターテイメント業界だけでなく、スポーツトレーニングなどでも活用されています。さらに、VRを通じて室内から世界中を自転車で周る体験や、遠隔旅行の体験など、想像を超えた体験が可能です。

4)VR/AR/XRの違い

「VR」は「仮想現実」、「AR」は「拡張現実(現実の風景に対し、コンピュータで情報を付加または合成して表示する技術を指します)」、「XR」は「交差現実」を意味します。XR(Cross Reality)はVRやARを含む、現実世界と仮想世界を統合し、新たな体験を生み出す技術の総称です。それに対して、ARは現実世界にデジタル情報をオーバーレイして表示する技術で、MRは現実世界と仮想世界の融合を可能にする技術を指します。これらの技術はそれぞれ独自の特性と利用可能なシナリオを持っており、その違いを理解することはVR環境を理解する上で重要です。

VRの例:「バーチャル渋谷」

ARの例:「FXMIRROR」(3Dバーチャルフィッティングツール)

2.VRの定義

VRには確定した定義が存在しないため、理解するのが難しい場合があります。しかし、バーチャルリアリティ学会では、この領域を理解するための3つの要素を提唱しています。まず、コンピュータが生成する3次元の人工環境が存在し、次にユーザーがその空間内で自由に行動し、環境とリアルタイムで相互作用できること。最後に、ユーザーと人工環境がシームレスに結びついて、完全な没入感を生み出すことが重要です。

VR及びメタバースの定義や考え方についてはこちらの動画もご参照ください。

 

1)VR空間の類型

VR空間には、3つの主要な類型が存在します。最初のタイプは、企業がVR空間内で自社のサービスを展開するものです。次に、プラットフォームを提供する企業(プラットフォーマー)がVR空間を運営し、他のサービス提供者がそれを利用してユーザーにコンテンツを提供するタイプです。最後に、プラットフォーマーが一つのVR空間を管理・運営し、その中で多くのコンテンツクリエイターがさまざまなサービスを提供するタイプがあります。

2)VRに関する法整備

VRの法的枠組みは、著作権法、商標法、個人情報保護法などが関わる領域であり、特に国際的な規模で適用される可能性があります。例えば、日本で生成されたVRコンテンツには、基本的に日本の著作権法が適用されます。

3)建築物や屋外の著作物

VR空間では、建築物やその内部構造、さらには屋外に常設されている美術の著作物の再現による利用が可能で、これは著作権法46条により許容されています。具体的には、「バーチャル渋谷」や「デジタル甲子園」のようなプロジェクトでは、公共の場に設置された彫刻や建築物の壁面装飾などがVR空間に再現されています。

4)屋内の著作物の場合

一方、屋内に設置されている美術の著作物の展示に関してはは、著作権法46条によって保護されており、VRでの再現には一定の制限があることに注意が必要です。たとえば、ショッピングモール内に設置された彫刻の場合、これが独立した美術作品とみなされれば、その再現は著作権侵害となる可能性があります。他方、彫刻がショッピングモールの一部として考えられる場合、再現が許容されることもあります。さらに、「屋外の場所に恒常的に設置されている美術の著作物」以外の著作物、例えば映画や音楽などの著作物を使用する場合は、別途著作権者から許諾を得ることが必要です。

5)実用品のVR体験と権利保護

VR技術は飛躍的に進化しており、これにより手術シミュレーターや製造業のトレーニングなど、実用品のCG再現が可能となりました。これらのVRコンテンツは現実世界の物品を高度に再現し、ユーザーに現実に近い疑似体験を提供します。しかし、これらのCG画像の著作権法上の扱いは難しく、美術作品としての独立した美的価値が認められる場合、著作権保護の対象となる可能性があります。

6)VRと法的責任: 実世界への影響

VR技術は現実世界に直接的な影響をもたらします。具体的には、VRヘッドセットの使用により、ユーザーはVR酔いや吐き気などの身体的不快感を経験する可能性があります。さらに、視界を完全に遮断することで現実世界でのつまずきや転倒、他の物体との衝突などの危険が増大します。これらのリスクは特に、身体を動かして操作するVRソフトウェアが増えている現状で、事故発生の可能性が高まります。商品に欠陥がある場合や、適切な説明がない場合には、製造物責任法に基づき損害賠償請求が可能となります。また、事業者は安全な設計と、ユーザーが安全に使用できるような情報を提供する責任を負います。事故が発生した場合、ハードウェア製造企業とソフトウェア提供企業の双方が共同不法行為により法的責任を問われる可能性があります。

3.VRコンテンツ制作における法的リスク

VRコンテンツ制作においては、著作権に加えて肖像権や個人情報の取扱いにも配慮が必要です。他人の肖像をVRコンテンツで使用する場合、その人物の肖像権を尊重する必要があります。また、VRコンテンツ内で広告を配信する際には、個人情報の取扱いについて慎重に考慮しなければなりません。日本ではVRコンテンツの利用年齢に関するガイドラインが存在しており、これに従い制作・配信を行うことが求められています。

※参考:VRコンテンツのご利用年齢に関するガイドライン

https://exra.or.jp/pdf/guidelines.pdf

4.VRの法的課題

VRの発展は止まらず、新たな法的課題が生まれています。特に、仮想オブジェクトやアバター、架空のキャラクターがVR空間で再現される際の法的な扱いは大きな課題となっています。これらの問題の解決は、VR技術のさらなる発展に向けて必要不可欠です。

1)仮想オブジェクトと法的権利

現行の著作権法は仮想空間に存在するオブジェクトに対する権利を十分に保護していません。特に、オブジェクトの作成者と利用者が異なる場合、法律上の「物」でないため、利用者の権利が保護されるのは難しいです。その結果、仮想オブジェクトが不正に使用された場合、法的補償を求めるのが難しい場合があります。仮想空間内の犯罪者を特定するのは困難で、その結果、損害賠償請求も困難となります。

2)VR空間内のアバター・キャラクターの経済的価値と法的課題

VR空間内の人気キャラクターを模したオブジェクトは、ユーザーにとって高い経済的価値を持つことがあります。しかし、そのキャラクターの著作権者と利用者が異なる場合、経済的価値に対する権利保護は困難です。そのため、VR空間での著作権保護についての新たな法制度の必要性が高まっています。

5.VRに関して相談するのに適した弁護士とは?

以上のように、VRについては最先端の技術やまだ解釈が定まっていない法律上の問題やリスクがたくさんあります。そのため、VRやメタバースについて相談したい事項や問題がある場合、相談相手としてVR技術やVR空間上の各種権利や適用される法律に関して適切な知見を持つ弁護士にアクセスすることが肝要です。

この点、前田拓郎法律事務所はVRやメタバースに関する法務に深い理解を持ち、著作権、特許、商標、不正競争防止法、侵害訴訟対応といった知的財産法務にも長けています。私たちはそれぞれのクライアントが直面する特有の問題を理解し、最適な解決策を提供することをお約束します。加えて専門的な知識と経験をもとに、あなたの権利と利益を保護します。弊所はオンラインで相談可能ですので遠方にお住まいの方にもおすすめです。

 

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